泣き虫なお姫さま。
これでも、俺だってまおにアピールしているのに。
「今夜、まおちゃん家なんだな」
後ろを歩く二人に聞こえないように、陽太が話し掛けて来る。
「あぁ、遅くなるらしい」
「…… 襲うなよ」
…… 誰が、襲うかッッ!
「アホッ」
陽太は知っている。
――― 俺がまおに片想いしていること。
――― まおが少し、男性恐怖症なところ。
陽太からしたら、まおはどうやら“妹”らしい。
“陽太くん”“陽太くん”って、言って懐かれることを嫌がらない。
逆に少し嬉しいようにも感じる、らしい。
陽太は陽太でまおを“まおちゃん”なんて呼んで――― すっげー、ムカつく。
「樹とまおちゃんは何かと近いんだから、樹から告白しちまえばいいのに」
「陽太と愛川なんて、中学から一緒なんだから、陽太から告白しちまえばいいのに」
そっくり返してやった。