ヘタレ王子とヤンキー姫
その子はなにも言わずに立ち尽くしていた。

「よかった。ちゃんと戻ってたんだね。あっもしかして迷子になった?一緒にお部屋に戻ろうか。」

その子はなにも言わない。

ただ下を向いてたっているだけだった。

「どうした?気分でも悪い?」

その子の顔を覗こうとして、やっと異変に気づいた。

服が濡れてる。

下に水溜まりができていた。

もう声がでない。

やっと気づいた。

この子…死んでるんだ。

男の子が顔をあげる。

目は真っ赤に充血していて、口を大きく開けて笑っていた。

「お兄ちゃん…遊ぼ。」

体が動かない。

誰か助けて!

男の子は笑い続けている。

「遊ぼうよ」

もうだめだ。

みんなの笑顔が走馬灯のように駆け巡って、僕は意識を手放した。
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