ヘタレ王子とヤンキー姫
けど子供の霊は、母親に気づかない。

母親の呼び掛けに答えない。

「ダメだ。負の感情が強すぎて怨念に支配されてる。」

お願い。気づいて。

「私の子…かわいい子…なぜお母さんを見てくれないの。」

ヤバい!母親までおかしくなり始めてる。

20年も生きたことないからわからないけど、きっとすごく長いんだろうな。

そんな時間ずっと一人でいたんだ。

助けてあげたいけど、あの子はもう、自分がわからなくなってる。

「くっ…」

樺音が首を絞められてる。

どうすればいい。

「あの…抱き締めてあげてください。」

母親の霊にそう言ったのは、春樹だった。

「子供は、母親に抱き締められると、すごく安心するから」

母親の霊は、頷くと、子供を後ろから抱き締めた。

「ダメよ。そんな意地悪しちゃ。お姉ちゃん嫌がってるでしょ?手を離しなさい。」

「おかあ…ちゃん?」

「よかった…やっと気づいてくれた…やっと見つけた。ごめんね長い間一人にして。」

「お母ちゃん寂しかった?」

「すごく寂しかったよ。」

「僕もだよ。」

よかった…和解できて。

再会できて。

樺音は少し苦しそうに呼吸していた。

目が合うと、軽く微笑んだ。

「よかったな。」

まるでそう言っているかのように。
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