ヘタレ王子とヤンキー姫
颯太は目の前にそっと置かれた灰皿に気づいた。

制服でも匂っていたのだろうか、さっきまでガラステーブルの下にあったそれが、目の前におかれている。

「吸ってもいいのかな?」

次に気づいた恵美が樺音に聞く。

「移動してるってことは、いいんじゃねぇの?」

そう言いながらも、樺音もタバコに火をつけようとはしない。

そこへちょうど、理名が入ってきた。

「フフっ…悩んでると思った。吸ってもいいわよ。」

それを合図に、3人は一斉にタバコを取り出した。

颯太はセブンスターを。

樺音はマイルドセブンのメンソールを。

恵美はマルボロのメンソールを。


それぞれ美味しそうに、吸っている。

「やっぱタバコはいいなぁ。
おっ恵美、肺に入れれるようになったのか?」

「二人みたいにかっこよく吸いたくて練習したのよ。」

そんなやり取りを、いつの間にか後ろで、春樹が見ていた。

「3人揃って何してるの?」

「「「タバコ吸ってる〜」」」

3人の声が重なる。


「3人とも未成年でしょ?」

「精神年齢は大人だよ。」

「少なくともお前よりはな。」
「そういう問題じゃないし」

春樹の抗議に、3人の笑い声が、室内に反響する。
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