ヘタレ王子とヤンキー姫
said MEGUMI

ノックの音がして、入ってきたのは樺音だった。

「うわっ…ちょ〜綺麗じゃん」
「でしょ?春樹は?」

「颯太のとこにいるよ。」

「私より先に颯太の花婿姿を見るなんて!!」

「バカじゃねぇの。」

呆れ気味に樺音が言う。

だって…。

「母親になるんだから、わけのわかんねぇことで喚いてんじゃねぇよ。」

そうだよね。

私ママになるんだ

きっと優しいママになるから。

楽しみにしててね赤ちゃん。

スタッフの人が呼びにきて、樺音は先に戻っていった。

私は鏡の前にたつ。

なんだかお腹の辺りが暖かい。

モデルとして着るのとは違うウェディングドレス。

今日は、モデル“M”としてじゃなくて、松井恵美…いやっ、坪井恵美として、このドレスに腕を通すんだ。

「坪井さん、時間です。」

「はーい。」

もう一度だけ鏡を見て、私は部屋を出た。
< 191 / 200 >

この作品をシェア

pagetop