ヘタレ王子とヤンキー姫
少年の一人が、拳を振り上げようとした瞬間、後ろから鈍い音が聞こえてきた。

「あっ?」

「なんだてめぇは?」

全員がそっちを見ると、少女が一人、壁を殴ったまま、不良たちを睨み付けていた。

「うるせぇんだよ…ひとの昼寝じゃましてんじゃねぇぞ。」

見ると壁は少しへこんでいた。
「なんだてめぇ?」

「だいたいてめぇがんなとこに突っ立ってるから、ぶつかんだろうが?」

「あっ?」

少女が近づいてくると、一人の少年が顔をひきつらせた。

「なぁこいつみたことねぇか?」

「知らねぇよ。こんなブス」

「よく見りゃかわいいぜ。取ってくっちまうか?」

下品な笑い声をあげる不良たちを必死になって止めるのは、さっきよりさらに顔を青くしている少年だった。
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