ヘタレ王子とヤンキー姫
理名は冷静になっていった。

「そばにいればいい。本当のことを話すんだ。」

樺音はなにも言わなかった。

その声は、春樹の部屋まで届いていた。

心配になった春樹は、こっそり様子を見に行った。

樺音は泣いていた。

「確かに莉那さんの言う通りかもしれない。けど、迷惑掛けるのは、性に合わねぇ。けじめつけてきます。」

「樺音…。」

「確かに友達を頼ることは大事だけど、頼りすぎもよくないし。何より春樹は絶対に巻き込めない。」

「てめぇ…私の息子なめてんのか。」

「確かに春樹は強い。けどあまりにも自覚が無さすぎる。誰かさんが甘やかすから。」

そう言って樺音は笑った。

理名も笑っていた。


「そうかもな。私は昔両親にあまり愛情をもらえなかった。だから自分の子供は、絶対に愛情一杯に育ててやるんだって決めたんだ。でもさすがに甘やかしすぎたかな。」

「そうだったんすか。」

樺音は立ち上がった。

「隠れるのはもうやめた。女王は女王らしく暴れてきますよ」

「行ってこい。けど無茶はすんなよ。お前はまだ若い。」

樺音は、笑顔を残して出ていった。

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