ヘタレ王子とヤンキー姫
春樹の目からは、大粒の涙がこぼれ始めていた。

それを見て、樺音がぎょっとする。

「なっ泣いてんじゃねぇよ。」

「だって、怖くて…」

春樹は泣き止む気配を見せない。


「ったくしかたねぇな。」

樺音は春樹の腕を引っ張ると、奥へつれていった。

「ここなら、でけぇ声出さねぇ限り誰も来ねぇよ。」

その言葉に安心したのか、春樹はよりいっそう声をあげて泣き始めた。

「だからでけぇ声出すなっていってんだろうが!」

そんな、樺音の怒鳴り声など、いまの春樹には届いてなかった。
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