ヘタレ王子とヤンキー姫
豊は正直焦っていた。

誰もが樺音を恨んでると思っていたのに、集まった人数は、樺音が喧嘩を仕掛けていた半分くらいだったからだ。

脅しをかけて無理矢理仲間にしたやつもいたが、それでも8割にも満たなかった。

逆に返り討ちに合うこともあった。

「くそっ!相変わらずムカつくやつだぜ。」

何人かは、恵美や春樹に手を出そうとしたが、傍にいる樺音や颯太に返り討ちにあい、逃げていった。

「仕方ねぇ…ラチるか。」

豊はニヤリと笑って、適当に歩き始めた。

遠くの方に、見覚えのある後ろ姿をみかける。

「よぉ。」

「誰ですか?」

その男は怯えながら聞いてくる。


「今日は一人なんだな。お前を守る女騎士はどこいった?」

豊は笑いを必死にこらえた。

こんなにも都合よくいくとは思ってなかったからだ。

「ちょっと付き合えや。」

豊は男の腹に一発蹴りを入れると、そのまま自分達のアジトへ連れていった。

もう一人の女も、たまたま一人になっているようだった。

「よぉ。」

女は豊をにらむ。

「俺を殴ればお前のお友だちが死ぬぜ?」

女は、豊の仲間が両脇を抱えてたたせている男を見ると、豊をにらみながらも、おとなしくついてきた。
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