ヘタレ王子とヤンキー姫
恵美は、目の前にたつ男に、キレていた。

「卑怯もの!!こんな真似しなきゃまともに喧嘩もできないの!?ちっちゃい男。」

「なんとでもいえや。」

男は余裕の笑みを見せる。

「家に帰りたいよ〜。怖いよ〜ママ、樺音…颯太助けて。」

横を見れば、春樹が泣き出していた。

「なかないで春樹。大丈夫よ。必ず来てくれるから。」

「ヒック…ホントに?」

「もちろんよ。」

ほんとは抱き締めて、安心させてあげたいが、手足を縛られているために、なにもできなかった。

「あんたら…春樹泣かせて!知らないわよ。樺音は春樹泣かせたら、本気で怒るんだから」

「てめぇしゃべりすぎだ。」

男に蹴りをいれられて、後ろに倒れる。

そのときポケットから、携帯が出てきた。

恵美は、唯一樺音にも勝る、早打ちを利用して、樺音に電話を掛けた。

(お願い、電話に出て。このままじゃ…春樹の体も心も持たない。)

樺音はなにかを察したかのようにすぐに出た。
< 65 / 200 >

この作品をシェア

pagetop