ヘタレ王子とヤンキー姫
春樹は、珍しく屋上に来ていた。


「はぁ…。」

今日はため息しか出てこない。

今朝の母親との会話を、思い出す。


『福場きで一週間の夫婦限定旅行が当たったの。ママ、パパ誘って行ってこようと思うんだけど、春くんお留守番できる?』

楽しそうに言う母親を見て、春樹は頷くしかなかった。

出発は、来週らしい。

「泣きそうなんですけど。」

一人呟いてみても、誰も何もいってくれない。

樺音に相談しようかとも考えたが、さすがにそこまで甘やかしてはくれないかと、すぐに諦めた。

春樹の目はすでに涙目になっている。

春樹にとって母親とそんなに長く離れるのは、初めてだった。

「はぁ〜…どうしよう…ママがいなくて、やってけるかな。」
春樹は不安でたまらなかった。

一人暮らしをしている樺音の家にいさせてもらおうかとも考えた。

「…だめだめ!いつまでも人に頼ってばっかりは。僕だって家事くらいできるようにならなきゃ。ママをビックリさせてやるんだ。」

春樹は、心に硬く誓って、屋上をあとにした。
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