ふわふわ
 私は紀江、十七歳。
 初めての彼氏、四歳年上のタクヤと付き合って一年になる。

 わからないことだらけ、初めてのことだらけ。
 それでも、タクは私を大事にしていてくれるし、今、すごく幸せ。
 否、「幸せだ」と思っていた。その日までは……。

 彼、楠くんは、タクヤの友達。
 半年前に、タクに紹介されて、初めて会ったときから、かっこいい人だなって思ってた。

 何度目かに会ったとき「のりちゃん」って呼ばれたのが嬉しくて。それが忘れられなかった。
 少ない経験上、彼氏以外の男の子に「ちゃん」づけで呼ばれたことがなかったから。
 彼氏と一緒に、飲み会に参加するたびに、会うたびにどんどん好きになる。でも、仲良く話したりするわけでもなく、ただ、見ていたいだけなんだと思っていた。
 タクヤを裏切ってるなんて、少しも思わない。

 楠くんの、もうすぐ結婚する彼女にも会ったことがある。
 優しそうなひと。
 嫉妬は感じない。
 仲良くしたかったけど、なんだか表面的な感じがした。自分の友達っていうのとはやっぱり違うし……。
 彼と話してるほうが楽しい。

 想像してみたこともある。
 タクより早くに楠くんに出会っていたら?
 でも、そんなことを考えたって、意味がないでしょ。
 タクに紹介されなかったら出会わなかったんだし。

 うん、わかってるよ……。
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