春の通り道 《超短編》
お小夜はおずおずと話しかける。
「お市ちゃん」
「何だい?」
「あたし、今は家が忙しいから おっかさんに早く帰っておいでって言われているんだ」
あぁ、そうか。
お市は合点する。
「そっか…それじゃ、またね」
お小夜はすこし申し訳なさそうな、それでいて嬉しそうな顔をした。
「うん。気をつけて」
「お小夜ちゃんもね」
お市は手を振って別れたあと
とぼとぼ歩きながら自分の店近くまできていた。