春の通り道 《超短編》
「誰が勝手だって?」





突然後ろから声がした。







「ひゃっ…」




思わず身を引いて後ろを振り返った。




「おっと、すまねぇ。暗い顔してるもんでな。何かやな事でもあったのかい?」



後ろにいたのはもう一人の幼なじみ、仙太郎だった。




心の臓が飛び出るほど動いていたが、やがて落ち着くとお市は口を開いた。






「ちょいと考え事をしてただけさね。



ところで、お小夜ちゃんがもうすぐ嫁にいくんだってさ。」





お市がしたと同じく、仙太郎も細い目をめ一杯開いてから破顔一笑する。







「おぉっ、そうかい。そりゃめでてぇこった!」









お市は一つ上の仙太郎ともまるで兄妹のように仲が良い。




いつも三人で日が暮れるまで外で遊んでいたものだった。





仙太郎もお小夜の祝宴を喜んでいることに嬉しさが再び沸き上がる。




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