春の通り道 《超短編》



ひと月とは長いようで短い。







それでも陽が少しずつ強くなり、桜の花盛りになるのには十分な時である。








この日、お市は家族と並んで通りに立っていた。




お市たちだけではなく、通りにはたくさんの人が花嫁を一目見ようと集まっていたのだ。












「そろそろ、お出になるころかしら?」




隣に立つ母が話し掛けたとき、にわかに周りの声が高揚した。





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