会いたい

 立ち止まって辺りを見回すと、外は家の中よりも茜色の大気が充満していた。
 薄がそれを反射して輝いている。
 風になびく薄の群勢は、少し離れて見える住宅街とは、まるで別世界のように静粛なものだった。
 私は一人その場に立ち尽くし、夕暮れを見ていた。
 風は少し冷たくて、冬の気配をかすかに漂わせている。
 この静寂は、彼らに似ている。あの不可思議に美しい恋人達に。

 彼らはいったい何者だったのだろうか。

 不意に心によぎる疑問。
 何故、彼らはあんなにも特別だったのだろう。
 まるでどちらも生きているように。
 どちらも、この世の者ではないように。
 今となっては確かめるすべはない。
 もう二度と、会うこともない。
 それは確信だった。
 それでも、私は彼らが少しだけ羨ましかった。
 私にもできたら、私はいつまでも透と一緒にいられたのに。
 あの一瞬だけでなく、何度でも気のすむまで、透の声を聞いていられたのに。

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