会いたい
こうして冷静に見てみると、確かに空き家は幽霊の出そうな雰囲気をかもしだしていた。
私は門に下げてあった立入禁止の札を直してから中へと入る。
決して大きくはないが、しっかりとしたつくりの家。
がっちりとしたドア。
白くなった床。
差し込む日差しの中で、塵が舞っている。
遠くで聞こえる子供の声が、逆にここを隔てられた空間へと錯覚させた。
透はこの家を好きだと言っていた。
透がいた時から、この家にはほとんど家具を初めとする生活用品がなかった。
透が一人では多すぎるからと売ってしまったのだ。
そのお金は透の放浪資金に消え、だからこの家は、透がいても空き家と同じだった。
透は、物に執着しなかった。
何も持たない方がかえって多くを得るのだと、言っていた。
言葉通り、透はいつでも自由で、何にも持たずに全てを持っていた。
私はそんな透が好きだった。
羨ましかった。
透はいつだって、私とは違っていたから。