会いたい
お な じ?
唇が、聞き返す。
「そうよ。同じ」
私も 待ってるの
私が紙に書くと、幽霊は、また、唇を動かした。
「何?」
だ れ? こ い び と?
短く、ゆっくり唇は動くので、多少透けてはいるが、何を言いたいのかはわかった。
「そう。私も、あなたと同じ。ずっと、待っているの――」
今度は、私が頷いた。
そうして、私は透のことを、書いた。
ゆっくりと、少しずつ、大切な想い出を、私は幽霊に長い時間をかけて語った。
幽霊は、もちろん黙って聞いていた。時折楽しげに、時折切なげに、時折哀しげに、頷いて聞いていた。
私は嬉しかった。
長い間、私は透のことを誰とも話していなかった。
楽しかったことだけが、鮮明に想い出される。
想い出す透の顔は、いつも穏やかに笑っていて、それだけで私を幸せにした。