夏恋~小さくて素敵な恋~



「タオル?もしかして、あれ?」

「えっ?」



顔を上げると、塚原くんが隅を指さす。



そこには、見覚えのある色。


クリーム色のあたしのタオルだ。



「あれだ!」

「やっぱり松岡のだったのか。」

「教えてくれてありがとう!」



やっぱり体育館だったんだ。



よかった。



タオルを手に取る。



そして、さっきの塚原くんの「やっぱり」という言葉が気になった。




「どうしてあたしのタオルだってわかったの?」

「ん?あ~、その刺繍。」

「刺繍…あ。」




赤い糸の刺繍。




お母さんがあたしの名前をアルファベットで刺繍してくれたんだった。




失くさないようにって。




「NARUって刺繍してあったから。」




そう言って笑った塚原くん。



――ドキッ…



ん…?


なに、この動悸は。



それに、さっきより鼓動が速くなってる。



塚原くんが"NARU"って刺繍の文字を言っただけ。



ただ読んだだけなのに…。



緊張しすぎて訳が分からない。



思えば、男の子とこんなに話すのも初めてかもしれない。



だからかな?



変だ…。



変な感覚…。



「本当にありがとう。」



それだけ言うのが精一杯だった。



それなのに、



「なぁ。」

「はい!」



突然の声に驚く。



「松岡も一緒にやらない?」



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