ふたりの練習曲 ~Raita side~
1st step
「ん、えっと・・・あれっ?」
俺は書きかけた図書カードに見付けた名前に、思わず鉛筆を動かす手を止めた。
『麻生由佳』
春休みも終わり、無事に進級した教室で、ついさっき聞いたばかりの名前。
長く伸ばした黒い髪に、透けるような白い肌。
簡潔に自己紹介する横顔は表情がとぼしくて、まるで人形のようだなとぼんやりと思った。
「・・・あの、すいません。
さっき返却した本、ちょっと見せてもらっても良いですか?」
返却本の整理をしていた図書委員の女子に声をかけて、春休み中に借りていた大量の本の背表紙を開く。
どこかで聞いた名前だと思ってたけど、図書カードで見かけていたのか・・・
ずらりと並べた貸出用の図書カード。
たくさんの名前が連なったものや、俺ともうひとり分の名前しか書き込まれていないもの。
けどそのどれにも、麻生由佳の名前は記されていた。
「由佳・・・か・・・
先輩、元気してんのかなぁ・・・」
俺は書きかけた図書カードに見付けた名前に、思わず鉛筆を動かす手を止めた。
『麻生由佳』
春休みも終わり、無事に進級した教室で、ついさっき聞いたばかりの名前。
長く伸ばした黒い髪に、透けるような白い肌。
簡潔に自己紹介する横顔は表情がとぼしくて、まるで人形のようだなとぼんやりと思った。
「・・・あの、すいません。
さっき返却した本、ちょっと見せてもらっても良いですか?」
返却本の整理をしていた図書委員の女子に声をかけて、春休み中に借りていた大量の本の背表紙を開く。
どこかで聞いた名前だと思ってたけど、図書カードで見かけていたのか・・・
ずらりと並べた貸出用の図書カード。
たくさんの名前が連なったものや、俺ともうひとり分の名前しか書き込まれていないもの。
けどそのどれにも、麻生由佳の名前は記されていた。
「由佳・・・か・・・
先輩、元気してんのかなぁ・・・」
< 1 / 20 >