-キミの声が聞きたくて-
あんなに遠くに感じていた“坂井くん”が、今はこんなにも近くにいる。
手を伸ばせば、届いちゃうんだ。
“坂井くん”から“陸翔”になって。
頭に触れられるくらい、近くなったんだ。
それに嬉しくなった。
「美和」
突然、陸翔に名前を呼ばれる。
ドクン。
心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい、ドクンドクン。とうるさい。
“なに??”
心の中で言いながら、言葉にならない声の代わりに
「……?」
首を傾げる。
「何でもない♪」
陸翔がそんな思いがけない意地悪を言うものだから、なんだか嬉しくなった。
“美和”
今の声、多分、ううん、絶対。
一生忘れない。