Sweet Chocolate Kiss(短編)
繋がれた逸都の手は凍っているように冷たくて。
しっとりと冷たい汗が彼の手のひらを覆っている。
逸都は…一度も私の顔を見なかった。
何も言わなかったけれど…あの時の逸都はかなり緊張してたんだと思う。
――フフッ。逸都のクセに。
コートの上で縦横無尽に走り回って自信たっぷりにプレーする逸都と、目の前で自信なさげにしょぼくれている逸都はまるで別人だ。
コートの上では敵や味方も欺く華麗なボールさばきを見せるクセに、こういう恋愛沙汰には意外と奥手でビックリするくらい臆病だったなんて…思いもしなかった……。
オレンジ色に染まる逸都の髪を私はヨシヨシと撫でると、フゥーと深呼吸をしてこう言った。
「残念だけどね?
私に用意された答えはYesしかないよ、逸都。」
そう言うと逸都はハッとしたような顔をして。
食い入るような目をして私をじっと見つめる。
「私は…バスケをやってる逸都が好きなんだから。そんなの大した障害じゃないよ?」
「ちょこ……」
「逸都のバスケバカはいつものコトでしょ?
逸都の一番近くで、逸都が夢を叶える瞬間が見られるのなら…、そんな幸せなことないよ。」