Sweet Chocolate Kiss(短編)
そう…言ってはみたものの。
教室ではみんなの目がある手前、堂々と誘うことができず。
部活中では、バスケバカ全開な逸都相手にそんな浮わついたコトを話せる雰囲気になんて一切ならず。
心愛に譲って貰って
あんなに“渡す”と息巻いていた例の物体は制服のポケットから出されることはなく…。
なんとも情けないことに
私の部屋のテーブルにオブジェのようにデデンと2枚置かれているのだった。
「へ…ヘタレにもほどがある……。」
チャンスなら正直いくらだってあった。
帰り道で誘ってもよかったし、今からアイツん家に行ってもいいくらいなんだし。
なのに…さ?
いざってなると勇気が出ない。
今日なんて帰り道、誘うチャンスはいくらだってあったのに
『じゃ、じゃあね。』
『オウッ!!また明日な、ちょこ!!』
なーーんて。
いつも通り玄関で別れちゃったし……
「へ…ヘタレにもほどがある…。」
テーブルの前に正座して
デデンと置かれたチケットを見て
私はハァァァァ~と盛大にため息を吐いた。