桜舞う中で
4
『すいません…』
そう言って先輩に近付く。
きっと携帯を出した時にでも落としたんだろう。
こんな大事なものを落としてしまった自分が恥ずかしかった。
手を伸ばし、受け取ろうとする私に
「宮本…
おう き‥ちゃん?」
生徒証を見つめながら尋ねてくる。
はぁ…
『はい
変な名前ですよねι』
今までに数え切れないほど名前のことで“変”とからかわれてきた私。
だから、きっと今回もそう思われてるんだろうと思った。
…のに
「何で?
かわいいじゃん
桜の姫ってことだよ」
先輩は予想もしなかった台詞を私に投げかけて
私の髪に触れると
「‥花びらついてた
まさに桜姫(サクラヒメ)だね」
桜の花弁を指で摘み、無邪気に笑った。
そんな先輩に
胸がトクンと
高鳴ったのを感じた…