伯爵と妖精~新しい息吹~
侍女のケリーを連れ、夫人と薔薇を見ていた。
「アシェンバート伯爵のようなかたとご結婚されたリディアさんは幸せ者だわ…」
独り言のように呟いた。
「わたくしも…、アシェンバート伯爵と夫婦に…」
「えっ…」
悲しげに目を伏せる夫人。
この人はエドガーのことが好きなのだろうか?
不安な気持ちになった。
「ねぇ、リディアさん…、伯爵とわたくしの関係を知っています?」
当たりを見渡すと薔薇迷宮に入っており、いつの間にかケリーともはぐれていた、
「わたくし、伯爵の愛人なの」
「そんなわけ無いわ…」
とっさに出てきた言葉だった。
「どうしてそう言い切るれるのかしら?いつも伯爵はおっしゃっていたわ、わたくしと結婚するべきだったと」
自分とエドガーは相思相愛で結婚したのだから、そんなことは絶対にない。
必死にそう自分にいい聞かせた。
「エドガーはそんなことを言う人じゃないわ!」
目眩がし倒れそうになった。
「奥様!!」
小道からケリーが駆け寄って来て抱き留めた。
「あら、気分が悪いのかしら?でしたらわたくしは失礼させて頂くわ」
そう言うと満面の笑みで去っていった。
それと同時にリディアは気を失った。
目が覚めたら寝室にいた。
隣にはフランシスが診察をし終えたのだろうか立っていた。
すると、ドアの方にいたエドガーが心配そうに駆け寄ってきて、
「薔薇園でリディアが倒れて心配したよ」
安堵の笑みを浮かべたエドガー。
しかしリディアはあの事を思い出しうつむいた。
「リディア?」
「貧血で倒れたんだろう、そっとしときなよ伯爵」
そういい聞かせフランシスとエドガーは部屋から出ていった。と同時に、ケリーがハチミツ入りのホットミルクを持って入って来た。
「奥様、ウェンベルト夫人に何か言われたのですか?」
心配そうに話し掛けてきたケリーにドキリした。
「どうしてそう思うの?」
ケリーは微笑みながら、
「侍女の感です」
と笑った。
それを見て安堵して涙が出て来た。
そして、夫人に言われた事を全て話した。
するとケリーはリディアの手を優しく包み、
「奥様大丈夫ですよ、旦那様には奥様にしか目がありません。愛人などおりませんわ!」
とリディアを勇気づけた。
「ケリーはすごいわ、私の悩みを全て跳ね退けてくれる…」
微笑みながらそう言うと、
「奥様の侍女ですから」
と胸を張って笑った。
それと同時に寝室のドアが閉まったことには気づかなかった。
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