ありのままの、あなたが欲しい。
「知的障害者……」


「そう。たまにここでお菓子を買ってくんだけど、皆元気でなぁ」



その人達を思い出しているのか、楽しそうに笑う森井さんは本当に慈愛に満ちているよう。


だけど、私の心は複雑だった。



知的障害者の人達に偏見があるとか、そういう問題じゃなく…

私はある忘れられない出来事から、彼らに対して良い感情を持ち合わせていないから──。



無意識に棚を整理する手を止めて、目の前の商品を見るともなく眺めていた私は、

「おっ、噂をすれば」

と言う森井さんの声に、はっとして顔を上げた。



大きなワゴン車から何人かの男女が降りてくるのが見える。


彼らが“アカシヤ”の人達…?


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