聖石学園～意地悪で腹黒のナイト様～

　先生の言葉に入り口から男の子が入ってくる。

　あたしはその姿を見た途端目を疑った。



　日に焼けたような少し長めの茶色い髪。

　体つきはしっかりと男らしいのに、幼さが見え隠れする可愛らしい顔。


　夏休み中旅行で出会ったあの小悪魔男だった――。



　う、うそ？


　あたしは、見間違いだと思いたくて何度も瞬きした。

　でも間違いなくあの男の子だ。


　あんなマネしてくれた奴、そうそう忘れられない。

　それでも時間がたてば忘れていただろうけど、会ったのはつい一週間ほど前のことだ。

　
「はじめまして、日生 拓馬（ﾋﾅｾ ﾀｸﾏ）です」

　小悪魔男が名乗ると、先生が説明を始めた。


「本当なら明日から登校してもらうはずなんだが、早くクラスに慣れたいという本人の希望によって今日から登校してもらった。皆仲良くするように」

　と先生が言い終わると、日生は自分から「皆さんよろしく」と挨拶する。



「じゃあ席は一番後ろの空いてるところだ。分からないことがあったら……そうだな、相楽」

「はい」

　呼ばれて、黒斗が席を立つ。


　その瞬間日生が目を丸くしたのが見えた。


「何かあったら日生のこと頼む」

「……はい」