聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 カメラも二人を追いかける。


 流石に役員は疲れてきているのか、ぜぇぜぇと息切れの声が大きく聞こえた。




 二人の背中が音楽室へ近付いてきてる。


「黒斗、頑張って」

 やっぱりあたしもデートするなら黒斗とがいい!


 そう祈りながら、あたしは中継のテレビを消した。

 そして、入り口の前に立つ。




 黒斗と拓馬、どちらが先に来るのであれ。

 あたしの想いがどうであれ。


 ジュエルとしての仕事はまっとうしないと……。


 バタバタと足音が聞こえる。


 来た……。


 そして足音が大きくなり、直前でドタァッと派手な音が聞こえた。


「え? 何? どっちか転んだの?」

 今の音はそれしか考えられない。


 心臓が早鐘を打つ。


 黒斗!!


 願いは届いたのかどうか分からない。


 でも、足音が一つ……近付いてきた。

 そして音楽室の入り口の前で止まる。



 仕事はちゃんとやらなきゃ。


 あたしは一度目を閉じ、気持ちを切り替えた。

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