聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
落ち込んでるの?
抱きしめられているからその表情は見えない。
でも、声色やあたしの首筋に落ちるため息から考えて、申し訳ないって思っているのは確かだった。
「他の奴とデートさせる羽目になるなんてな……」
「いいよ、大丈夫。弘樹なら変な心配事とかする必要ないし。それに……」
そう言葉を一度止め、あたしは黒斗の体から少し離れてしっかり顔を見て続けた。
「黒斗は、頑張ってくれたでしょう?」
あたしの言葉に、黒斗は数回目蓋を瞬(しばたた)かせる。
「苦手なUFOキャッチャーだって、諦めずに何度も取れるまで挑戦してくれたでしょ? そこでかなりロスしても、頑張って先に行った拓馬に追いついてくれた」
仮装行列で疲れていたはずなのに……。
あたしは微笑んで黒斗の背中に腕を回す。
そして労(ねぎら)う様に、背中を軽く叩いた。
「黒斗が頑張ってくれてたの、ちゃんと見てたもん。……有り難う」
最後の言葉はちょっと照れくさくて小声になった。
でも、すぐ側に黒斗の耳があるんだから聞こえたよね?
「友、お前って……」
黒斗はそこで言葉を止めて、あたしを抱きしめる腕に力を込めた。