聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
「何でそんな勝手な事するのよ!?」

 あたしは怒鳴る。


 とんでもない指令はいつもの事だけど、今回のは流石に横暴だ。


「勝手な事したのは貴方でしょう? お母さんは前から芸能クラスのある学校にしてって言ってたのに」

「それこそ何で!? あたしタレントでも俳優でも芸人でも歌手でも……ましてやモデルでもないんだよ!?」
 そう、たまに助っ人として出される事はあるけど、ちゃんと契約を結んでいるわけじゃない。

 それでも助っ人として出れたのは、ただ単にお母さんの娘だからだ。


「それはあんたが契約書にサインしてくれないからでしょう? もう実質的にウチのタレントってことになってるのに」


 あー言えばこう言う!


 あたしは昂(たか)ぶった感情を落ち着けるために、深呼吸をした。
 そして今度は冷静に聞く。

「何でお母さんはあたしに芸能活動させたいわけ? あたしなんて何の芸も無いし、容姿も十人並みのどこにでもいる女の子だよ?」

「それはあんたがそう思いこんでるだけ。確かに子供の頃はそうでもなかったけど、今は女優時代のお母さんに似て美人になってきたわよ?」

 そう言ったお母さんは、ウェーブがかった黒髪を揺らしてあたしの顔を覗き込んだ。


 そう、お母さんは女優だった。


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