聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
「でも何で拓馬その衣装なのさ? オレはともかくとして、他の皆は全員執事風なのに……」

 素朴な疑問として言った言葉だった。

 でも拓馬の気に障ってしまったのか、その表情はますます不機嫌になる。


 あわわ……。

 地雷踏んじゃった?


「お前や黒斗が文化祭の準備や練習でいなかったときにほぼ強制的に決まったんだよ」

 不機嫌ながらも説明は続けてくれるみたいだ。


「クラスの奴ら皆して『お前の可愛い姿が見たい!』とか何とか言いやがって……」

 とぶつぶつ愚痴り始めた。



 ……哀れ。


 拓馬の愚痴を聞き流しながらそう思う。


 文句なんて言っても聞き入れてもらえなかったんだろう。

 あたしにも経験があるからよく分かる。


 他人事とは思えない状況に苦笑いしていると、少し離れた場所でキャー! と黄色い悲鳴が上がる。


 何事かと思って声の方を見ると、そこには数人の女の子と黒斗の姿があった。


「っ!」

 次の瞬間、あたしは息を止める。


 女の子達が黒斗に抱きついたから……。


 何だか……嫌だ。


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