聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
「友、お前なんつー顔してんだよ」

 愚痴を言っていた拓馬が、いつの間にかあたしを見てそう口にした。


 なんつー顔って……。

 うん、きっと酷い顔してるんだよね。


 胸の奥でモヤモヤと暗雲のようなものがうごめいてる。

 考えなくたって分かる。

 これは嫉妬だ。


 あたし以外の女の子に、黒斗を触れさせたくない。

 あたし以外の女の子を黒斗に触れて欲しくない。


 それはただの我儘だっていうのは分かっているけど、こういうシーンを目撃してしまうとそう思わずにはいられない。



 黒斗に触れないで……。



 きっと酷い顔してる。

 さっきよりもずっと酷い顔。

 でも、この思いは止められない。

 あたしは黒斗が好きだから……。



「なあ、俺にしとけよ」

 じっとあたしを見ていた拓馬が、突然そんなことを言い出した。


「俺ならお前にそんな顔させねぇからさ」


 はっきり言わせて貰うと、今の可愛らしい格好で言われても何とも思わない。

 でも、その言葉そのものにあたしの心が僅かに揺れた。


 こんな嫌な気持ち、出来るなら持ちたくないから。


 ……でも。


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