聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 もっと相応しい人がいるのは知ってるし、大体あたしは正式に契約しているタレントじゃない。

 助っ人ならともかく、こんな……事前に話をされるようなちゃんとした仕事なんか請けられない。



 何であたしにこんな話が来るわけ?


 不審に思って探るようにお母さんを見た。


「もう、そんな目で見ないでよ。ちゃんと話すから」

 今のあたしがお母さんの目にどう映ったのかは分からないけど、ちゃんと説明してくれるみたいだから良かった。


 助っ人を頼まれるときは大抵文句を言うヒマもなく放り込まれたから……。

「あんた、ウチのタレントの写真よく撮ってくれる鳴海(ナルミ)っていうカメラマン知ってるわよね?」

 そう切り出され、記憶の倉庫から該当するものを引っ張り出す。


 鳴海 仁(ナルミ ヒトシ)。


 結構有名なカメラマンで、お母さんの事務所のタレント以外にも様々な芸能人の写真を撮っている。

 最近有名雑誌の表紙や人気歌手のCDジャケットも手がけていて、今人気急上昇のカメラマンだ。



「うん、知ってる。……実際に会ったことはないけどね」

「そうね、会ったことはないわね」

 そう相づちを打ってお母さんは続ける。

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