聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
幕間
事務所では、あたしの顔を知っている人が多い。
小さい頃からお母さんについて出入りしていたから当然といえば当然だ。
「あら、もしかして友ちゃん? 少し見ない間に綺麗になったわねぇ!?」
受付に行くと、馴染みの社員がそんな風に言ってきた。
まだ若いはずなのに、そんな台詞を言うとおばちゃんのように感じる。
「どうも、お久しぶりです」
「ええ。社長から話は聞いてるわ。社長室覚えてるわよね?」
「はい」
「じゃあ案内はいらないわね。行ってらっしゃい」
そうして許可を貰って、あたしと黒斗は社長室へ向かった。
社長室へ行くと、秘書の人がすぐに応接室に案内してお母さんを呼んで来てくれる。
応接室に入ってきたお母さんは、初めから仕事の顔をしていた。
「ここに来たってことは決意したってことね?」
あたし達の前に座ったお母さんは、早速本題に入る。
あたしも、真剣にお母さんの目を見て答えた。
「うん。あたしモデルの仕事、請けたい!」
多くは語らない。
何を言ったって、きっとそれは未熟者の甘いたわ言にしか聞こえないから。
だから、どれだけこの仕事をしたいのか。ただそれだけを目力にして訴える。