聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 今でもたまに女優の仕事してるけど、どちらかというと事務所のほうに力を入れている。


 そのお母さんは確かに美人だ。
 黒い髪は健康的でいつも天使の輪が見えるし、肌だって15の娘がいるとは思えないほど若々しい。
 紅を塗ってもいないのにほのかに赤い唇は、娘のあたしですらたまに見惚れてしまいそう……。


 でも、だからといってあたしもそうだという保障は全く無い。

 実際、小学校の頃から「母親に似てないね」と、友人、親戚、果ては父親にまでも言われてきたんだ。
 今更お母さん似の美人だと言われても説得力が無い。


「お世辞か親バカ発言にしか聞こえないんだけど?」
 あたしはそう返した。

 だって、信じられない物は信じられないんだもん。


 そんなあたしに、お母さんは諦めたように深いため息をつく。


「もう信じなくてもいいわよ。……でも、進学の手続きはもう済ませちゃってるから、高校はそっちに行ってよね?」

 お母さんの言葉にあたしも諦めた。
 全部の手続きを終えてしまっているなら、もうあたしの力ではどうしようもない。


「仕方ないな……。どこの学校? それ」
 ため息混じりに聞いた。


「聖石学園」
 お母さんは簡潔に、答えのみを言う。


「…………」
 あたしは押し黙り、記憶の中からその学校を思い起こした。



< 4 / 364 >

この作品をシェア

pagetop