聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 真剣な表情……。

 あたしはこんな人達を騙してるんだ……。


 それを思うとズキリと心が痛んだ。


 こんなとき思うのは黒斗のこと。
 黒斗は皆を騙してて、罪悪感は湧いてこないんだろうか? ――と。


 でも今は黒斗の事を考えているときじゃない。

 田代先輩にちゃんと返事を返さないと……。




 でも返事なんて決まってる。

 OKするわけにはいかない。


 だから……。



「ごめんなさい……」


 言った瞬間に田代先輩の顔が悲しそうに歪んだ。

 そのまま、しばらく沈黙が落ちる。



「俺も……ごめんな。いきなりこんなこと言って……」

 沈黙を破ったのは田代先輩だった。

「いえ……じゃあオレ、戻りますね……」

 そう言って反対側を向き、扉に手を掛けたときだった。


 バァン!!


 あたしの頭の両側から腕が現れ、扉を思い切り突き叩いた。

 その音の大きさに、あたしの体は思い切り跳ね上がる。
 悲鳴が喉元まで上がってきたけど、声としては出てこない。
< 74 / 364 >

この作品をシェア

pagetop