聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 体育館倉庫の中にはあたしと田代先輩しかいない。

 つまり、今扉に手をついているのは田代先輩だ。


 何……?


 状況がイマイチ理解できない。

 さっきまで、普通に優しそうに見えた田代先輩が、こんな乱暴な真似をした?


 信じられない気持ちだったけど、視界に入る二本の腕は田代先輩以外には考えられない。

 それに、背中にしっかりと体温を感じる。


 背中には体温以外にも、田代先輩の……男の胸板の感触がした。

 学ラン越しでも分かる、女とは違う硬い筋肉の感触。



 あたしは、途端に怖くなった……。


「そんなすぐに戻らないでくれよ……」

 優しさの欠片も無い低い声が耳元で聞こえ、あたしの中の恐怖は増した。


「何のためにわざわざナイトいないときに呼んだと思ってるんだ?」

 恐怖でカタカタと震え、動けないでいるあたしの体を田代先輩は抱きしめる。


「付き合うのが無理なら、せめて一回ヤりたいと思ったからだぜ?」

 そう言った田代先輩は、そのままあたしの体を持ち上げマットの上に乱暴に投げた。
 その拍子にメガネが外れる。


「いったぁ……」

 マットに投げられて手首をひねったのか、左手首に鈍い痛みを感じた。

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