聖石学園~意地悪で腹黒のナイト様~
 両肩にある高志の手の体温が温かい。

 そしてもう一つ触れ合っている唇も、温かかった……。



 触れるだけの優しいキスは、あたしに“抵抗”の二文字を忘れさせ、受け入れさせる。


 唇が離れて、高志の申し訳なさそうな表情を見てやっと正気に戻った。

「……高志……お前、今っ」


 ガタッ


 高志にどういうつもりなのか聞き出そうとしたとき、保健室のドアが動いた。

 そこからは黒斗が現れる。


「お? 友、起きたのか。……どうしたんだ、二人とも。何かあったのか?」

 黒斗の質問に、あたし達は「何も……」としか答えられなかった……。


 結局あたしは高志に何も聞けないまま黒斗と帰路についた。


 高志はどういうつもりでキスなんて……。

 まさか女だってバレてる?

 いや、でも高志の性格からしてバレたらかなり驚いて色々聞いてきそうだし……。
 それは無いかな?

 それに万が一バレてたんだとしても、キスしてくる理由が分からない。


 キスって、普通好きだからするよね?

 高志は、もしあたしが女でも彼女にはしたくないって言ってなかった?


 それを考えるとやっぱりキスの理由が分からない……。


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