愛・地獄変 [父娘の哀情物語り]
 顔を真っ赤にして、憤りの言葉を発せられ続けます。
酒のせいなのか、お怒りのせいなのか、あれ程に赤くなった顔色は見たことがありません。
ご老人の前には、お銚子が三本並んでいます。
話の辻褄が合わぬのは、ま、ご愛嬌でしょうけれども。
兎にも角にも、冷やかしの言葉をかけられたご仁の謝罪の言葉があって、ようやく落ち着かれました。

 よろしい、そうまで仰るなら結構。
とに角わたくしですな、小夜子お嬢さまを妻に迎えてからはひと筋なのですからな。
えっと、何のお話でしたかな?そうそう、少しお酒をたしなんだ夜のことでした。
娘の妙子が、わたくしの部屋にやってまいりましたのです。
「お父さん、肩を揉んであげるね。」
「急にどうした?」と問いただしても、
「いいから、いいから。」と、笑うだけでございます。

 娘は、私の腰にまたがり、足のふくらはぎそして足首を揉んでくれました。
親孝行のつもりかもしれません。
しかし私にとっては・・・。
娘と分かってはいても、暖かく柔らかいお尻の感触が悩ましいのでございます。娘は、薄いパジャマ姿でございました。
お風呂上がりのせいもあるのでございましょうか、少し汗ばんでいたのでしょう、湿り気を感じました。
若い女の体臭とでも申しましょうか・・・。
ぷーん、と良い匂いでございます、ぐふふ・・。
申し訳ございません。
娘でございます、分かっております。
分かってはいるのでございますが、ムクムクと、又しても。
< 19 / 46 >

この作品をシェア

pagetop