死が二人を分かつまで
きちんと対峙すれば、誰しもが目を奪われてしまう程の美少年であるにも関わらず、その存在に気付かせないかのように、周りの人々や景色に自然に溶け込んでしまうのだ。


まるで擬態をする昆虫のように。


だが、進藤はその事実に内心ほくそ笑んでいた。


彼の真の魅力を知る、数少ない者のうちの一人であるという自己満足に浸れるからだ。


よくよく考えれば、かなり際どい感情のような気もするが、進藤は『いや、それは違う』と即座に否定する。


いずれさとしはどんどん人気が出て、万人から愛される存在になるだろう。


そして一般人である進藤と接する機会は少なくなっていく筈である。


独占欲が出てきてしまうのは当然だ。


子どもの頃、1番の親友に自分とだけ遊んでもらいたくて、だけどそれは叶わなくて、切ない思いをした事がある。


この思いはその感情と同等のものだ。

きっとそうだ。

そうに違いない。


進藤は一人、心の中でうんうんと頷いた。


渦中のさとしは今日、ボイストレーニングに行くと言っていた。


帰りは22時くらいになるとも。
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