藁半紙の原稿




「ごめんくださぁーい」








台所でお昼の後片付けをしていると、玄関で元気な声が響いた。

「はいはぁい」




手ぬぐいで手を拭きながら出ていくとスーツ姿の女の人がいた。
しっかりと描かれた眉をハの字にしてキョトンとした顔で私を見ている。
今までの訪問者の反応でどういう事かは容易に想像がついた。


「あ、私ここで働かせていただいている播田と申します。浅間様に何か…?」



そこまで言って霎介さん以外の人間がここにいる理由がわかったらしい。
彼女は慌ただしく頭を下げ、ずれていた眼鏡をかけ直すと名刺を取り出して私に渡した。



「私、北風舎で浅間先生の担当をさせていただいております雪音 蛍(セツネ ケイ)です。お見知りおき下さい」



ハキハキとして気持ちの良い声。
彼女なら男性の営業者と一緒に仕事していても気後れしないだろう英気があった。

かと言って女性としての魅力もある、好感の持てる人だった。
















「おや、セツ君じゃないか」
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