藁半紙の原稿
五月二十九日 快晴




午前に本の修繕を栞君に頼む。
大層大事さふに本を眺めてゐる彼女を見てゐたら、何故だか本が無性に羨ましくなつてしまつた。

彼女に想われる男はさぞ幸せ者だらう、等と思つた。

さふ言ゑば、彼女は近頃元気である。
やつて来た当初よりも少女らしくなつた気がする。






昼に食べた素麺は入れた事のない薬味が多く出された。
薬味は葱だけだと思つてゐたので、驚いたが、全て入れて食べてみると中々どうして美味かつた。

茄子を炒めて入れても美味ひらしい。




午後はセツ君が原稿を受け取りにやつて来る。


栞君の話をすると、大した内容ではなかつたが大層興味深さふに聞ゐてくれた。





夕飯の時に、栞君が庭の雑草の中から"のびる"とやらを見つけたと話してゐた。
漬物にするとそれは飯がすすむのださふだ。
是非食べてみたひと思つた。





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