藁半紙の原稿

薄明かり

チュン、チュン



トントントントン





「霎介さーん?おはようございまーす」

「む…」

雨戸を開けて振り返ると朝日の差し込む部屋の奥で霎介さんが眩しそうに目をしばたいた。


「…おはよう、播田君」


眼鏡をかけていない彼は、切れ長の目が一層際立って見える。
若干呆とした表情は寝起きしか見られない。
そう思うと、少し胸が温かくなった。


「おはようございます。朝御飯の支度、出来てますよ」

「うむ…あぁ播田君」


部屋を出ようとした所を呼び止められ振り返ると、彼は眼鏡を捜しあて丁度いつもの顔になった所だった。


「今日の晩は水神を祭る祭がある」

「…?…はぁ、そうなんですか?」

「それに行く。君も来たまえ」



早口にそう言うと、早々に布団から抜け出し私を追い抜いてずんずん居間へと向かってしまった。


何か買い付けの用事だろうか?

どうであれ、霎介さんと一緒にお祭りに行ける。

そう思うと、私の内心は弾んだ。





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