藁半紙の原稿
パシッ

グイ…




「…ぁ、」

「猫か」



転倒することを予想して身体を固くしたものの、予想された痛みは伴わず、目を開けるとそこに霎介さんの顔があった。


引っ張られた右手はまだ霎介さんの手の中で、背中越しに浴衣に包まれた霎介さんの胸板の熱を感じる。





嗚呼、

きっと今の私の顔は熱があるかのごとく真っ赤になっている事だろう。

熱のせいか、瞳が潤む。














霎介さんが私の視線に気付いて、こちらを見て目を丸くする。




呆然とした、沈黙が流れる。
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