学園恋愛事情
意を決して部活の前に音楽室に向かう。

まだ、2人の姿はなく静かだった。



サッカーの練習着姿の俺には…似合わない場所。

窓からは外の声が入ってくる。
窓に近づきグランドを覗き見ると、練習が始まっていた。



「こんなによく見えるんだ。」



窓から一度も歌音の姿なんて見えた事ないし…気付いてないんだろうな。
…絶対先輩に怒られるなぁ…。


そんな事を思いながら、窓に背中を付けて俯く。



ガラガラ…



ドアの開く音に顔を上げると、
歌音がびっくりした表情で、聞き慣れた高めの声で話しかけて来る。



「あれ?!部活は?!」



歌音と目が合った瞬間に、目を逸らしてしまう講介。

これから、自分が歌音に言おうとしている事を考えると、後ろめたくなったのだ。



自分の気持ちに嘘をついて、好きでもない子と付き合う事と、それを歌音は軽蔑しないか…。


不安で苦しくなる。
『好きなのは歌音だ。』
なんて…
一生言えなくなる。



歌音は目を逸らす講介の顔を覗き見る様に近付き



「どうしたの?」



そう言って、講介の腕を軽く握って揺する。
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