はじめまして、素敵な殿方。
きらきら御奉仕
それは、運命の出会いとしか言いようの無いものだった。

「急がなくては!!購買のパンが売り切れてしまう!!」

「葵くん!!私のサンドイッチでよかったら食べて!!」

「いいえ、私のお弁当を食べて!!お口に合うか分からないけど!!!!」

「ごめん!やっぱり自分で手に入れた食事ほどおいしいものはないからね!!僕は自分で買いに行くよ!!」

長い足で優雅に女子の間をすり抜けていった。

そんな秋馬 葵を見送りながら、取り残された乙女たちはつぶやく。

「男らしくて・・・素敵。」





「かっ・・・完売だとぉおおおおお!?」

「はい。ごめんなさいね。うちの焼きそばパン。人気なのよねぇ。また明日きてちょうだい!」

全力で走ってきたにもかかわらず、間に合わなかった。

「そんな・・・・この僕が・・・出遅れるだなんて・・・っ」

ブツブツつぶやきながら廊下を歩いていると、

ドンッ

「うわっ」

誰かとぶつかってしまった。

葵が間抜けにしりもちをついていると、ぶつかった相手は即座に立ち上がり、葵に手を差し伸べた。

「大丈夫か。すまない。前を見ていなかった私が悪いな。」

「あぁ…こちらこそ、余所見をしていたよ。」

葵は素直にその手をとる。

それと同時に、その手の小ささに驚く。

ぶつかった相手は女子だった。

「ちょっと私は急いでいるから、失礼する。」

「ああ・・・そう。」

小さい。

葵も背は高すぎるほうではなかったが、どうみてもその女子は背が低めだった。

葵が無事なことを確認すると、女子は背を向けて別の道を行ってしまったのだが、二、三歩あるいてからなにか思い出したように立ち止まり、再び葵の方に振り返った。

「それからこれ、お詫びといってはなんだが。」

女子はぽいっと何かをよこした。

「こっ・・・これはっ・・・」

「購買限定やきそばパン。お前ほしがってただろ。」

「なんでそれをっ・・・」

「あれだけ大声で騒いでいれば嫌でも耳にはいるさ。」

「おっ…おおっ!!なんで僕は運が良いんだ!!君は命の恩人だ!!名前・・・・は?」

気がつくと、もう女子はどこかへ行ってしまったあとだった。

一人取り残された廊下で、葵はうっとりとつぶやく。

「なんて男らしいんだ・・・・。」




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