忘れないよ、



どうしてこうなるの。



「ごめんなさい」

あたしはそう呟いて、膝に顔をうずめた。

もう、半分泣いていた。


「じゃ、そういうことだから」


顔を上げたあたしを背に、君は歩き出す。



行かないでよ、一緒にいたいよ。



「待って」


あたしは出来るだけ、
落ち着いた声で君を呼び止めた。

泣いちゃ、だめだ。

「…ひとつ、訊きたいことがあるの」

君の足が歩くのをやめてぴたりと止まる。



「あたしのこと、もう嫌い?」





「嫌い?」と訊いた瞬間、
肩が揺れたのは思い違いだろうか。
あたしの気のせいだろうか。

君に言ったなら、
思い上がりだと笑うだろうか。

わずかに首がこちらに向く。

あたしは、苦しくなって唾を呑み込んだ。

静寂な、どこか張り詰めた空気に
愛しい君の声だけが響く。



「わからない」



悲しくて、でもどこか安心した。




「わかった。ありがとう」


「うん」

君の声は寂しさを帯びていた。



「好きだよ」

あたしは、これが最後だと思って
精一杯の愛の言葉を告げた。


「…」



少し潤んだ君の目は、
やはりどこか寂しそうで、悲しそうで。

君には言ってもらえない、
とわかっていながら応えを待っている。


「…」


あたしって、卑怯だ。


君は少し考えて、
またあたしに背を向けて、


「好きだったよ」



そう言って、歩いていった。





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