俺のこと、好きなくせに
そして、おそらく俺も。


火が出てるんじゃなかろうかというくらい、尋常じゃなく顔が熱くなったから。


俺達は、夕日の差し込む教室で、それ以上に顔面を赤く染めながら、数10秒間、ただただ無言で見つめあった。

吹奏楽部の調子っぱずれのトランペットの音とか、校庭で練習中のサッカー部の顧問の怒鳴り散らす声とかが、風にのって聞こえてきていた。


「とりあえず……」


そんな時間が永遠に続くかと思われたが、またもや瞳が空気を変えた。


「これ終わらせて、早くかえろ?」

「お、おう……」


それまでの口論が嘘のように俺達は黙々と作業に没頭した。


「俺もだから」


担任にできあがった資料を渡し、二人で無言で昇降口までたどり着き、下駄箱から靴を取り出した所で、俺はポツリと呟いた。


「俺も、お前のこと、好きだから」


そのままその場から走り去ってまったので、具体的な話は何もしていない。


でも、そんな必要はなかった。


お互いに愛の告白を終えた俺達は、その瞬間から、恋人同士になったのだ。


特別宣言はしなかったけれど、そういう雰囲気は周りにも伝わるもので……。


いつの間にか、俺達は、クラスで公認の仲となっていた。
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