俺のこと、好きなくせに
「何言ってんの。進藤君のせいじゃないわよ。この子がおっちょこちょいなの」


そして俺の言葉を「アハハ」と陽気に笑いながら否定する。

ふいに、チラリと腕時計に視線を走らせて、おばさんは言葉を発した。


「あ、そろそろ面会時間終わるよ?進藤君」

「あ、ハイ」

「おばさんも下まで一緒に行くわ。売店閉まる前に買い物しておかなくちゃ」

面会時間終了と売店の閉店は共に19時だった。


そして、あと2時間もすれば消灯。


病院の一日は外界とは違うリズムで進んで行く。


外はまだほんのり明るいのに。


普通の高校生だったら、これからが楽しい時間なのに。


改めて、心の中で指を折り、その期間を計算した。


瞳はもうこんな場所で、半年近くも暮らしているんだ……。



「じゃ、瞳、またな」


戸口で片手をあげてそう言うと、彼女は笑顔で小さく手を振った。


よりにもよって点滴が付いている方の手を上げたもんだから、管がブラブラして、またもや俺は一瞬固まる。

思わず文句を言いそうになって、だけど何をどう言って良いのか分からず、結局そのまま病室を後にした。

「いつもありがとね、進藤君」


廊下を共に進みながらおばさんと会話を交わす。
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