俺のこと、好きなくせに
「いえ。どうせ帰り道だし。ただ、3年ともなると補習が多くて。いつも面会時間スレスレになっちゃってすみません」

「何言ってんの~。来てもらえるだけで有り難いわよ~」


エレベーターホールにたどり着き、違う階にある箱を呼びよせるべく、ボタンを押しながらおばさんは言葉を繋ぐ。


「あと、クラスの皆さんにも感謝しなくちゃね。他人の為に交代でノートコピーしてくれてるんだもの。中々できることじゃないわよね」

「ああ、いや。うちのクラスの女子って結構おせっかいな奴が多いから。みんな喜んでやってますよ」


そこで箱が到着した。


二人で乗り込み、操作パネルの近くにいたおばさんが階数ボタンと「閉」ボタンを押して振り向いた所で、会話を再開する。


「それに、コピー機は職員室のだし。費用は学校持ちですから」

「ふふっ…」


俺のおどけながらの言葉に、おばさんは小さく笑いを漏らした後、続けた。


「瞳はホント、お友達に恵まれたわね」


しみじみとした口調だった。


「希望の高校に入って、やさしいクラスメートと出会えて、しかも進藤君みたいな素敵なボーイフレンドまでできて……」


そこでおばさんは一旦言葉を切る。
< 5 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop